アンティークの重鎮が語る「時計との出会い」

現在、アンティーク時計業界を覆う品薄の問題。30余年アンティーク時計を扱って来た経験を元に、バイイングにも新しい手順や方法で納得できる時計を探し続けたいと、有竹さんは語る。
これからのアンティーク時計
アンティーク時計は、1本1本、それぞれ市場にあまりないという希少性、あと現行品にはないデザイン性があります。それから1つの時計には様々なエピソードもある。また、現在、未来への時計の進化のプロセスが、古き良き時代の時計に宿っているんです。そして、古い時計を扱っていると、色々なものを大事にすると言う感覚が生まれて来る。この5つのポイントを大事にしながら、30年間、やってきましたね。





(上)OMEGA Ref.2367-5
クロノメーター 2トーンダイヤル 1945年製
¥\556,500(税込)
(下)OMEGA  18K GOLD
レクタンギュラーケース キャリバー17.8 1948 年製
¥766,500(税込)
人間は70年なり80年生きるわけですよね。扱っている時計は50年前のものも70年前のものもありますが、時間が経って、人間でいえばお年寄りになっている時計もある、それが元気に動いているということは、持っている人たちがハートのある扱いをしている、しまっているだけじゃダメで、ちゃんと着けてあげて、大事にしてあげるということで、時計が活きると思うんです。それが、アンティークの魅力ですね。

私が思うに、大英帝国の伝統というか、イギリスは他の国の古いものを自分の国に持って来て、大英博物館に納めてますが、日本人と感覚とモノに対する考え方が違いますね。他国のモノであっても、古いモノを『飾るもの』として取り扱う、もしくはそれを『活かす』。まあ、家作りも古いですから、それに溶け込むように使う、日常的な、コーヒーカップにしろ照明器具にしろ、大事に使ってますよね。そういう、古いモノを大事にする精神があるということですね。
でも、最近は本当にアンティーク時計が少なくなって来ている。私を含めて日本サイドでアンティーク時計を扱っている人たちは、常にそれが頭にあります。それを考えたら眠れなくなってしまう。(笑)もし、10年前にその質問をされたら、まあ、あと20年は大丈夫だよ、って答えてたと思うんですが、現状私がいえるのは、あと1年は大丈夫、でもその後は全く予測がつかない。どうしたらいいのか。でも、現行品とアンティークをミックスさせてやってく気も全くない。でも、やめるわけにも行かないので、根気強くいいものを探して来る。イギリスだけではなく、ドイツも行こうと思ってますし、フランス、イタリア、アフリカにも行こうというのが今年の方針ですね。

アフリカはケープタウンに行けば、植民地時代の名残でいいものが残っている可能性がある、と。昔サウスアフリカからディーラーが来て、そこから商品を買っていたというのがありますからね。ところが10年ぐらい前からぱったり来なくなった。それがドイツでひょっこり会って。そこで、商品が今無いって言っても、あるところにはあるから、一緒に探しに行こうと。それでサウスアフリカに行こうと。だから、イギリスだけじゃモノは集まらないですよね。
今まではマーケットへ行っても、僕に声をかけて来て、ポケットから時計を出して来て、その中から選ぶことができた。しかも、僕の方に値段の交渉権があった。でも今値段の話をして、僕が『高い』って言うと、すぐにポケットにしまっちゃう。そっちに値段交渉権がある。で、こっちもその話を蹴っちゃって、でも他をあたっても時計がないからもう1回そいつに声をかけると、『もう売れたよ』って。それぐらい動きが速い。ということはどうしたらいいかというと、今現状は高いけれども、経験でこの時計はこれから上がるだろうとか、わかりますよね。そういうのを徹底的に押さえに行く。だから、時計が無いと言う話ですが、明日よりも今日、全財産を投げ出しても時計を買いに行きますよ。ただ、色々な時計の中でもものすごく値上がりしている時計は、ありますよね。そういうものは買わない。でも私が『良い』と思って、ちょっと高いけど買ってもいいと納得できるものなら、3年後を見込んで買いに行きます。厳しい状況ではありますが。
Dazzling - SHIGGY COLLECTION -
 
〒150-0001 渋谷区神宮前4-25-10
TEL:03-3475-6677
営業時間11:00〜19:00
定休日 水曜日
 
 
『ROLEX SCENE 1913~1997』
有竹氏のROLEXコレクションの中から、厳選した400本を掲載。
1913年から1997年までのモデルを広くカバーした、世界屈指のROLEXコレクション本である。それぞれの時計に、細かいコメントがつけられていて、手に入れたエピソードなども興味深い。右の写真は有竹氏にサインを入れていただいたもの。(ワールドフォトプレス発行)
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