時計を今すぐイメージチェンジ! STRAP WORKS ―時計革ベルトの世界―presented by ROOTS

<革>から世界が見えてくる
 基本的に原皮の生産国は、皮が食肉の副産品である為、アメリカやオーストラリア等食肉の生産量が多い国と考えられます。また、<皮>から <革>へなめされる原料は、品質もよく頭数も多い牛革が圧倒的です。
皮の加工はたいていの国で行われていますが、規模は縮小傾向にある国が多く、名のあるタンナーが次々と消滅しています。
しかしながら、世界の皮革産業全体の扱う量はさほど変化してません。原皮や革の輸出は、安い賃金でなめしや革製品を作る国々へと移行しています。

なかでも、「革のなめし」に関しては二極化が進んでいます。
フランスやイタリア等の良質な革をなめすタンナーと、中国や南米等の安い賃金で大量に革をなめすタンナーとに分かれています。
 
     
日本は、加工や製品に関してはその中間で板ばさみの状態にあり、更に革物の製造業の衰退も重なり、原皮や革の輸入量も減少していますが、一方で、日本は革の大量消費国なのです。ブランド物等の革製品がヨーロッパから大量に入り、また安価な製品も中国等から入ってきているのです。
 今回は、前回からさらに世界を広げ、アジア以外の地域の革事情をお届けします。
 1 日本
日本  日本の輸入する皮革量は、20年前から比べると4分の1程度に縮小してしまいました。
もっとも大きな要因は、皮革を使った製造業の衰退です。日本の牛皮は地生と呼ばれ、一ヶ月で10万頭が処理されています。きめが細かく綺麗ですが厚みが薄いのが特徴で、刻印が無い為椅子張りや家具等に使われることが多いです。
ピッグスキンは、唯一自給自足でき幅広く使用されています。ここ近年、丈夫で使いやすい事からその良さが再度見直されています。
爬虫類皮に関しては、<ウエットブルー>と呼ばれる染色前の状態で輸入され日本人が好む色に染める事が多いです。
 2 韓国
韓国  スポーツシューズ用の革を生産していましたが、中国等に工場が移転してしまい皮革産業は苦戦を強いられています。
 3 中国
中国  ここ10年で急成長しているエリアです。
食肉の生産量もダントツで多いですが、皮革の輸出量はさほど多くなく自国消費をしている為と思われます。
タンナー数も多く生産量は上昇していますが、品質面ではまだまだです。
皮革製品の製造業も飛躍的に伸びています。
 4 東南アジア
東南アジア  インドネシア・カンボジア・タイ・マレーシア・フィリピン・ベトナム等のエリア。
爬虫類系の原皮は主にこのエリアとアフリカに頼っています。
リザード・パイソン等他では獲れない革を原皮、あるいはウエットブルーの状態で輸出しています。クロコダイルの養殖も盛んに行われており、その他山羊等も扱います。
 5 北米
北米  原皮の大量輸出国と共に、北米のステアは世界最大の輸出量です。ですがその一方で、有名タンナーが次々と消滅してしまいました。
 タンナーでは、コードバンをなめすホーウィンがよく知られています。オイルドレザーで知られるプライムダンニングは、工場を中国に移転してしまいました。
 爬虫類では、ミシシッピー川のアリゲーターが有名です。その他、オーストリッチ・亀等も一部扱っています。
 6 南米
南米  ブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイ等にタンナーが多数あります。
 なめされた革は、アメリカ・中国等に大量に輸出されます。また、ウエットブルーの状態で輸出される事も多くなっています。
 なめしの技術そのものはまだまだで、原皮を輸出する原料国の役割が大きく牛革の扱いが最も多いです。
 爬虫類系の革も扱いますがワシントン条約の影響でやや減少しています。
 7 インド・バングラデシュ・パキスタン
インド・バングラデシュ・パキスタン  背中にコブのあるセブーやバッファロー・山羊革等を主に扱います。
 中級品が多く、まだまだ原料国としての役割が大きい地域です。原皮のまま輸出する場合と、タンニンなめしのクラスト<色をつける前の状態>、クロームなめしのクラストがイタリアや日本等に大量に輸出されています。
  インドでは、かつてリザードの輸出が多かったのですが、ワシントン条約によって輸出入禁止になっています。
 8 オーストラリア
東南アジア   特にオーストラリアにしか生息しないカンガルー革は有名で、高級スパイク等に使用されています。
 その他では、牛・羊・鹿等をなめしています。食肉の大量輸出国だけに原皮も大変大量に輸出しています。
 赤道に近い場所では、クロコダイル等の爬虫類の養殖を行っています。ダチョウ・蛇・リザード等も生息、取り扱いも行っています。
 9 アフリカ
アフリカ   製革産業自体は、まだまだ発展途上ですが、さまざまな原皮を扱う一大原料エリアとして知られています。
 牛革・シープ等をヨーロッパのタンナーに輸出しています。特に良質な南アフリカのケープシープはイギリスをはじめヨーロッパ各国に流通しています。
 ナイルクロコ等の爬虫類革の他、ナイルパーチ・象革等も供給しています。
 また、オーストリッチを扱うk.k.c という組合が有名で、世界の有名ブランドで採用されています。
 10 ロシア・北欧
東南アジア  寒い国で育つ牛の皮は、厚い割に質はさほど良くはなく、イタリア等に輸出され加工されることが多いです。
 近年、沈没船から回収されたロシアンカーフというトナカイ革が話題になりました。
 今や幻の革とされるロシアンカーフは、トナカイ<レインディア>の皮を特殊な技術でなめしたものです。
 ロシア革命後、その製造技術は失われてしまいましたが、1786年にイギリス沖合で沈んだ船から1973年に革が発見され奇跡的に再生されました。
 約200年の時を経て現代に蘇った大変に希少な素材です。
 革の世界は、天然の素材を扱うため、製法や加工方法は一つだけではなく、さまざまな気候や地域の特色による違いが表れる、非常に面白い素材です。

次回は、動物によって違う、革の特徴をご紹介していきます!